肩の痛みとは
肩は起きている間は常に重い腕を支え、ほとんどの動作にも関わっていますので、肩のトラブルは日常生活に大きな支障を及ぼします。また動かすと強い痛みを起こす四十肩・五十肩などでは、就寝中の無意識な身動きによって起こる激しい痛みで睡眠が中断されて睡眠の質が下がり、日中の注意力や集中力低下を生じることもあります。
肩の痛みは、同じ姿勢を続けるなどによる肩こりの悪化、スポーツやダンスなど身体を動かした際に生じる怪我、骨などの変形やずれ、加齢による変性、炎症など、様々な原因で起こっており、整形外科専門医による丁寧な問診と適切な検査をもとにした正確な診断に基づいた治療が必要です。
症状が軽い早期に治療を開始すると、楽な治療でより早く治せる可能性が高くなりますので、気になる症状がありましたら気軽にご相談ください。
「こり」と「痛み」の違い
肩こりは多くの方が経験したことのある一般的な症状であり、肩の筋肉の張りとして感じられる場合もありますが、痛みとして感じられる場合もあります。肩こりのほとんどは姿勢の悪さや同じ姿勢を長時間続けて生じたもので健康上の問題はありません。ただし、十分な休息や睡眠をとっても改善しない慢性的な肩こりがある場合や、頭痛・手足の痺れ・耳鳴り・めまいなど他の症状を伴う場合には、治療が必要な首の疾患が原因となっている可能性があり、早期の整形外科受診が必要です。
肩の構造
肩関節は上腕骨と肩甲骨をつないでおり、ボール状の上腕骨頭が、肩甲骨にある受け皿のような形状の関節窩にはまっています。腕骨骨頭が受け皿の中を擦れるように動くことで腕が自在に、そしてスムーズに大きく動きます。肩関節周辺の骨や筋肉などに変形やずれが生じると腕をスムーズに動かせなくなる、動かせる範囲が狭くなる、痛みが生じるなどの症状を起こします。こうした症状があると、日常生活に必要な様々な動作ができなくなってしまうことがあります。
肩の異常を起こす主な原因
外傷
転倒などの事故やスポーツによって生じる肩の怪我のことです。主な肩の怪我には骨折や骨挫傷、腱板損傷、肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼などがあります。また、直接肩へのダメージを受けていなくても、転倒時に手をついて受け皿である部分に上腕骨が強く突き上げ、肩の腱板の損傷や断裂を生じるケースもあります。
加齢による変性
長年に渡って蓄積されたダメージによって腱板が少しずつすり減って生じる腱板変性断裂をはじめ、加齢によって起こる肩の骨の変形、骨と筋肉をつなぐ腱板の異常などで肩の周囲にある組織が損傷を受け、痛みが起こることがあります。
慢性的な炎症
肩関節の炎症では、「四十肩」「五十肩」と呼ばれている肩関節周囲炎が代表的な疾患です。肩関節周囲炎は一般的に痛み止め処方や注射療法が行われていますが、痛みや炎症を抑える治療に加え、根本的な原因にアプローチして狭くなってしまった可動域を回復させるリハビリテーションが重要です。当院では整形外科専門医が診察して、必要な検査を行った上で運動処方箋を作成し、それをもとに理学療法士が患者さんの状態やご希望にきめ細かく合わせたリハビリテーションの個別メニューを組み、丁寧な指導やサポートを行っています。特に、肩やその周囲の可動域、柔軟性、関節の動き、全身のバランスや姿勢、機能などをチェックし、快適な動きと再発予防につながる治療を行っています。
肩の痛みを起こす主な疾患
脱臼
肩関節は、上腕骨の骨頭と、肩甲骨関節窩がボールと受け皿のような構造になっており、腕が大きくスムーズに動ける反面、外れる・ゆるむなどのトラブルを起こすリスクがあり、無理な動きだけでなく、転んで手をついた拍子に脱臼してしまうこともあります。
脱臼した場合は、できるだけ早く正しい位置に戻す整復が重要です。ベッドにうつ伏せになり、腕に適切な重さの重錘を装着して外に垂らすと、痛みもほとんどなく自然に正常な位置へ整復できます。脱臼すると多くの場合は周囲の筋肉や靱帯、関節包などにも損傷が及びますが、ベッドと重錘による上記の方法で整復することで周囲へのダメージも最小限に抑えることができます。ただ、稀ですが後ろに脱臼している場合や、筋肉が発達している方では、整復できないことがあるため、その場合は超音波ガイド下神経ブロックを追加します。脱臼を繰り返し起こしている場合には、手術を検討する場合もあります。
整復後は安静を保ち、状態が安定してきたら適切なリハビリテーションをはじめることでより早い回復が期待でき、脱臼の再発予防にもつながります。
リハビリテーションでは、上腕骨と肩甲骨関節窩の求心位の改善、筋力回復、可動域改善や柔軟性アップなど、全身バランスを考慮したトレーニングやストレッチを丁寧に指導しており、セルフケアなどについてもわかりやすくお伝えしています。
石灰沈着性腱板炎
肩関節内にリン酸カルシウム結晶である石灰が急激に沈着し、炎症による激しい痛みが急激に起こって数週間その痛みが続きます。早めに適切な治療を受けないと、急性期を過ぎて痛みが改善してもしばらく経過してからまた新たに痛みを生じるようになり、腕をほとんど動かせず改善も難しい凍結肩になってしまう可能性もあります。
急性期
急に痛みが起こり、強い炎症による痛みは2~3週間続きます。動かさずにいても痛み、夜間にも激しい痛みがあり、肩を動かすこともできない状態です。適切な治療をできるだけ早く受けて症状を緩和させることは、慢性期の症状改善にも役立ちます。
慢性期
急性期の痛みは緩和します。ただし、急性期に肩を動かせなかった時期があり、それによって筋肉や靱帯がかたくなっています。それを放置してしまうと新たな痛みが起こるようになり、腕の動きが制限されて肩関節周囲組織に拘縮を起こし、可動域が極端に狭くなる凍結肩になるリスクがあります。凍結肩になってしまうとどんな治療をしても回復が難しいので、急性期から治療をはじめ、慢性期になったらリハビリテーションで筋肉や靱帯の柔軟性を回復させ、可動域を広げることが重要です。
肩関節周囲炎(四十肩/五十肩)
昔から「四十肩」「五十肩」と呼ばれてきた肩関節周囲炎は、肩の整形外科疾患で最も発症頻度が高い疾患です。肩だけでなく、それ以外の様々な部位の関与があって発症しているケースがあり、根本的な原因を見極めて適切な治療やリハビリテーションを行わないと十分な回復が望めず、肩のみの治療や調整では再発を繰り返すことも少なくありません。
当院では、整形外科専門医が丁寧に診療し、最適な治療法を提案いたします。必要に応じてトレーニングやストレッチなどのサポートを行っております。
腱板損傷/腱板断裂
肩の腱板損傷や腱板断裂は、スポーツや事故によって起こるケースと、加齢によって生じるケースがあり、適した治療法や必要になるリハビリテーションの内容も大きく異なります。
スポーツや事故が原因の場合は、痛みが急に現れて、肩の動きが制限されます。
原因が加齢の場合には、肩周囲の筋力が低下したり、腱が変性して脆弱になった状態が背景にあり、その上で過度な負担がかかって骨と筋肉をつないでいる腱板が摩耗することでダメージが生じます。
痛みの緩和とリハビリテーションでの治療を行いますが、保存療法では十分な効果を得られない場合や損傷の程度によっては手術を検討します。
肩こり
肩やその周辺の筋肉は、重い頭部や腕を支える際にも、動かす際にも大きな負担がかかり、こりや痛みを生じやすい部位です。使い過ぎなどによる炎症も生じやすく、日常的なダメージが積み重なって慢性的な肩こりに悩む方も少なくありません。
睡眠などで解消できる肩こりであれば、あまり心配する必要はありませんが、強いこりや痛みがある、めまいや頭痛など他の症状を伴う場合には、疾患が原因になっている可能性があります。なお、まれですが心筋梗塞で胸の痛みではなく、強い肩こりや顎の痛みなどを感じることもありますので、注意が必要です。
野球肩
投球障害肩とも呼ばれる、投球の際に肩の痛みを生じる疾患です。成人にも成長期の子どもにも起こりますが、子どもの場合には成長への影響に配慮した治療やリハビリテーションが必要になります。また、子どもの場合、オーバーユースが原因となって骨端線が開いてしまう上腕骨近位骨端線離開(リトルリーグ肩)も疑う必要があります。
なお、野球肩では、投球の動作のどのタイミングで、どの場所に、どんな痛みが起こるかなどに個人差があります。さらに、投球動作には肩や腕だけでなく下半身や体幹も大きく関与します。根本的な原因にアプローチした適切な治療やリハビリテーションのためには、全身のバランスや筋肉の状態、可動域、柔軟性などのチェックも重要になります。
インピンジメント症候群に注意を
インピンジメント症候群は、肩関節内の骨同士や骨と軟骨・靱帯・腱とが衝突したり、骨の間に筋肉が挟まったりすることで、痛みを生じる疾患で、野球、バレーボール、テニス、バドミントンなどのスポーツで肩を激しく動かす動作を繰り返すことで発症します。成長期に発症すると成長を妨げる可能性があり、できるだけ早い段階で適切な治療を受けることが重要になります。成長期のお子様がこういったスポーツを行っており、強い肩の痛みが現れた場合には速やかにご相談ください。
検査・診断
X線検査
骨の変形の有無と状態を精密に把握します。構造的に動作時の衝突や過剰な負担が生じないかなどについても確認していきます。
超音波(エコー)検査
X線検査では確認できない軟部組織の腱板や筋肉の状態や働き、血液の循環、炎症、関節内水疱の有無やサイズ、腫瘍などの発見に有効であり、リアルタイムで状態を観察できます。
MRI検査
炎症の状態や範囲、軟部組織(腱板・筋肉・軟骨・靱帯・関節包など)の状態を精密に調べることができ、一般的な検査では確認が困難な肩関節安定に関与する関節唇なども確認でき、正確な評価が可能になります。なお、MRI検査が必要な場合には、連携している高度医療機関をご紹介し、そちらで検査を受けて頂いています。
治療
薬物治療
痛みや炎症を抑える内服薬や外用薬の処方を主に行っています。
安静
症状が強い場合には負担を抑えるために肩の安静を保つことが重要です。必要な場合には、三角布で腕を吊るなどが行われることもあります。
特にスポーツ外傷では、症状が落ち着いて機能が完全に回復するまで安静を保ち、それから調整期間を経ることで結果的にはより早い回復につながり、再発の可能性も低くなります。当院では、患部の状態を見極め、影響しない部位の調整や強化につながる治療とリハビリテーションにも対応しており、休養期間を可能な限り短縮して早く復帰できるよう、状態の評価を頻繁に行えるよう配慮しています。
物理療法
物理的な刺激によって血液やリンパ液の循環を促進させ、筋緊張を和らげて痛みなどの症状を緩和し、炎症の改善にもつなげます。深部にもピンポイントで熱を伝えることができ、表面からは届かない深層の回復促進も可能です。運動療法と組み合わせることで、より高い効果を期待できます。
運動器リハビリテーション
整形外科専門医の運動処方をもとに、理学療法士が患者さんと相談しながら個別メニューを組んでいます。現在の状態に合わせた肩の運動やストレッチ、筋力トレーニングなどを丁寧に指導して、筋肉の緊張をほぐし、柔軟性を高め、可動域を回復していきます。また、姿勢やフォームなどをチェックし、改善のための指導を行って再発防止やパフォーマンスアップにつなげています。
肩の怪我や疾患でも、原因には肩以外の部位が大きく関与していることがありますので、体幹や下半身なども含めた全身の状態を把握した上で調整し、姿勢やフォームなどのチェックと改善のための指導を行って、より早い復帰や再発防止、パフォーマンスアップにつなげています。
その痛みは本当に肩だけが原因?
肩の痛みは、肩関節だけでなく、他の部位が関与している場合があり、特に肩こりや肩の痛みは首の疾患が原因で起きていることが少なくありません。肩部分だけの痛みと、後頭部や首、背中といった広い範囲の痛みを伴う場合では、疑われる疾患が異なり、まれですが内科疾患によって肩の痛みを生じている可能性もあります。原因となっている疾患や部位を正確に見極めることが、適切な治療やリハビリテーションには不可欠です。
放置してしまうと日常生活に大きな支障を及ぼす可能性もありますので、肩の痛みが続く場合には、早めにご相談ください。
肩の痛みでお困りの場合は、お気軽にご相談ください
肩の痛みを起こす疾患のほとんどは、できるだけ早く適切な治療を受けることで、悪化を防いで早く治せる可能性が高くなります。痛みや違和感程度でも、気になる症状がありましたら、速やかにご相談ください。
肩の痛みを放置していると、関節がかたまって可動域が制限され、さらに強い痛みを起こすようになって、可動域も極端に狭くなってしまいます。悪化させてしまうと日常生活に支障が及び、治療も困難になる可能性があります。
当院では、症状のある肩だけではなく、全身の状態を診療した上で精密な検査を行って診断し、適切な治療やリハビリテーションにつなげています。状態やご希望、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた治療や調整を行っていますので、肩の違和感や痛みなど気になる症状がありましたら早めにご相談ください。
よくあるご質問
肩甲骨が左だけ痛いのはなぜですか?
肩甲骨の左側だけが痛い原因として内臓の問題が考えられます。 とくに、体の左側には、心臓・肺・胃・すい臓といった重要な内臓が位置しており、これらの器官に不調があると背中や肩甲骨周辺に痛みが現れることが稀にあります。
寝違えたのか肩甲骨が痛いです。早く治すにはどうしたらいいですか?
肩甲骨の痛みの原因が寝違えたことであれば、安静にすることが治す近道です。痛みが強い・腫れなど肩の炎症が起きている場合は早めに整形外科に受診しましょう。すぐ受診できない場合は氷などでアイシングすることも効果的です。
肩甲骨が固い人が肩こりになりやすいのはなぜですか?
肩甲骨まわりの筋肉が肩の動きと関連しているため、肩甲骨の固さは肩こりに繋がります。肩甲骨が固い人に見られる特徴として、「デスクワークによる長時間の前かがみの姿勢」、「運動不足による肩回りの筋力低下」、「過度なストレスによる筋肉の硬直」がみられます。
肩甲骨はがしは何に効きますか?危険性はありますか?
肩こりやスポーツ障害などの怪我予防に効果的です。肩甲骨周りの硬く縮んだ筋肉をほぐし、可動域を広げると、血流やリンパの流れを促します。 その結果、血行が良くなり、肩こりの症状が緩和されるのです。まあ、柔軟性から怪我予防につながります。